こんにちは、英検1級ホルダーのザトーです。
この記事は英検1級の受験に向けてどの英単語帳が良いか調べている方々に向けて書いています。
当ブログでは過去に英検1級向けの英単語帳の紹介をしましたが、ここ数年で英単語帳の改定が相次ぎ、過去記事で紹介した英単語帳の情報が全て古いものになってしまいました。
具体的には以下のタイミングでそれぞれの参考書が改訂されました。
英検1級 でる順パス単(以下、「パス単」と表記) 2021/6/25に4訂版⇒5訂版
英検1級 文で覚える単熟語(以下、「文単」と表記) 2022/7/8に3訂版⇒4訂版
出る順で最短合格!英検1級単熟語EX (以下、「単熟語EX」と表記)2023/3/30に無印⇒第2版
究極の英単語Vol. 4 超上級の3000語(以下、「究極4」と表記)2024/4/11に無印⇒改訂版
この記事では英検1級のリーディング問題の語彙問題を解くための最重要指標を「正解選択肢的中数」として、2023年度試験での正解選択肢の的中数を各参考書で比較しました。
こうして比較すると、圧倒的な的中数を誇る「結論単語帳」が明らかになりました。
最初に結論から申し上げると、『単熟語EX第2版』が最高です。
結論だけ知りたかった方はブラウザを閉じてください。
結論だけでは満足できない方はこの記事の続きもお読みください。
各参考書の英検1級語彙問題的中率を比較
各参考書の正解選択肢の的中数を、2023年度の試験回ごとにまとめたものを以下に示します。
もっと過去の回(例えば2022年度の問題)も分析の対象にしても良かったのですが、そうすると、(発売前の試験は分析対象に入っているであろう)2023年の3月に発売された「単熟語EX第2版」が有利になってしまうので、全ての参考書が発売された後の試験のみを対象にしました。
集計する際には、試験に出た英単語の意味が容易に推定できる派生語が「見出し語」として掲載されていれば「的中」と見なしました。
例えば、副詞「haphazardly:でたらめに」が正解選択肢として出題されている場合、形容詞「haphazard:でたらめの」が見出し語として収録されている場合も「的中」と見なしています。
ご覧のように、単熟語EX第2版が一番的中率が高いように見えますね。
特に23年度第3回試験では圧巻の25/25と100%の的中率です。
この回ではライバルポジションのパス単5訂は16/25の的中率なので、「単語帳選びで9点差(素点)がついてしまう」という、恐ろしいことになっています。
次に、3回の試験の的中数の平均値で比べました。
的中率は次の順番になります。
1位:単熟語EX第2版(22.3/25)
2位:単熟語EX無印(20.7/25)
3位:パス単4訂版(19.3/25)
4位:パス単5訂版(14.0/25)
同着最下位:文単3訂版&文単4訂版(8.0/25)
「究極の英単語Vol.4」の単語問題の的中率
さて、先ほどのランキングは英熟語の語彙問題も含めた比較です。
そのため、英熟語が(ほぼ)掲載されていない究極Vol.4を同列に比較することは出来ませんでした。
そこで、25問中4問出題される英熟語問題を除き、21問の英単語問題の的中率を究極の英単語Vol.4込みで比較します。
次に、3回の試験の的中数の平均値で比べました。
1位:単熟語EX第2版(18.3/21)
2位:単熟語EX無印(17.0/21)
3位:パス単4訂版(16.0/21)
同着4位:究極Vol.4&新究極Vol.4(14.3/21)
6位:パス単5訂版(10.7/25)
同着最下位:文単3訂版&文単4訂版(6.7/21)
究極Vol.4の的中率はパス単5訂版よりも上ではあるものの、パス単4訂版よりは下、王者の単熟語には及ばず・・といったところでしょう。
※特に英検1級に特化しているわけではない単語帳にも関わらず、パス単5訂版よりも高順位な点は注目に値するでしょう
次に、各単語帳の改定前後での変化点を個別に見ていきたいと思います。
第2版で純粋に強化された絶対的王者:単熟語EX
まずは絶対的王者の単熟語EXの改定前後を比較しましょう。
無印の段階で既にパス単4訂版に僅差で勝利していましたが、第2版で純粋に強化されました。
上のグラフからわかるように、正解数の期待値で1.6伸びています。
ちなみに、3回分の試験の75問の正解選択肢の単熟語うち、
第2版にしか収録されていない単熟語:7/75
無印にしか収録されていない単熟語:2/75
このように、無印にしか収録されていない単熟語が出題されるので、単熟語EXの無印(旧版)も覚えた方が良いのでしょうか?
個人的には、その答えはNOですね。
2023年度第2回の12番と、2023年度第3回の8番が無印にしか収録されていない単熟語が正解になった問題ですが、2023年度第2回の12番の正解選択肢は「金フレに掲載されるレベル」の単語でした。
おそらく、ジャパンタイムズも難易度が低すぎると見なして除いたのでしょうし、英検1級を受けるレベルの人が知らないとは思えない英単語です。
無印にしか収録されていない英単語で、差がつく問題は1/75、3回の試験で1問のみ。
第2版をやった人が初版をやるメリットは、去年の1年間のデータを見る限りでは大きくないでしょう。
これが結論単語帳
ちなみにですが、収録された単語だけではなく、ユーザビリティも大幅に向上しています。
無印ではテクニカルタームは「覚えさせる気が無いのか?」と思えるぐらいに、ごちゃっと羅列されていましたが、第2版ではちゃんと見出し語として収録されています。
また、無印の時代には「abceed」に対応していないというその1点だけで、個人的にはパス単4訂版よりも低評価でしたが、abceed対応を果たして、使い勝手も大幅に向上しました。
「abceedって何?」という方は当ブログのabceedに関する記事もご参照ください。
全力後退した結果、ライバルに大差で負け:パス単5訂版
次に、英検1級の単語帳の定番書でありながら、ライバル(単熟語EX)に大差をつけられているパス単です。
こちらのグラフからもわかるように5訂版を4訂版と比べて的中率が大幅に下がっています。
期待値的には5.3問の低下、ボーダーライン付近に多くの受験者がせめぎあう英検1級1次試験においては致命的ですね。
世間からも「簡単になりすぎた」との声をよく聞きますが、その通りの印象。
パス単4訂版時代は単熟語EX無印と良きライバルでしたが、単熟語EXが前進しているのに対して後退してしまい、(語彙問題を対策するという点においては)大差をつけて負けていますね。
「英検1級の長文問題やリスニング問題に出てくる単語でわからない単語が多いので簡単なレベルから始めたい人」が1冊目に選ぶのならばギリギリオススメできるのではないかな?と思います。
プレミア価格のパス単1級4訂版を購入する必要はあるのか?
この難易度の低下は、世間でもそれなりに知られていますので、「改定前のパス単を欲しい」と思う方が一定数いるでしょう。
事実、4訂版にはプレミア価格がついており、2024年4月現在、新品は8千円を超える金額でAmazonで売られています。
しかし、個人的にはプレミア価格での購入は不要かなと思います。
理由①:網羅度では単熟語EX第2版がほぼ上位互換
パス単1級4訂版が5訂版と比べて優れているものの、現在の王者の「単熟語EX第2版」と比べると大差があります。
3回分の試験の75問の正解選択肢の単熟語うち、
単熟語EX第2版に収録され、パス単4訂版に収録されていない単熟語:12/75
パス単4訂版に収録され、単熟語EX第2版に収録されていない単熟語:3/75
おまけに、パス単4訂版にしか収録されていない単熟語は2023年度第2回の12番と14番と19番の3つですが、そのうち2つは金フレレベルの単熟語なので、英検1級を目指すレベルならば知っていて当然の、あまり差がつかない単熟語です。
つまり、過去3回のデータを見る限りでは単熟語EX第2版をやった上で、追加でパス単4訂版をこなしても、それほどスコアに直結しないと思います。
理由②:Kindle版や、アプリ『英単語by物書堂』でパス単4訂版を学習できる
今どきなので、紙の本だけが学習手段ではないでしょう。
2024年4月現在、パス単4訂版を学習する方法は2つあります。
その1:Kindle版
言わずとしれたKindleで(プレミア価格ではない)通常価格で電子版を購入できます。
音声ダウンロードサービスのURLも、まだ有効なので、書籍8ページのパスワードを入力すれば音声ダウンロードもまだ可能です(これを書いている2024年4月現在の情報)
URLも参考にこちらに貼っておきます。
https://www.obunsha.co.jp/tokuten/passtan
その2:アプリ『英単語by物書堂』での購入
androidには対応していないので、iPhoneもしくはiPadを使われている方限定ですが、アプリ『英単語by物書堂』で、まだパス単4訂版の購入が可能です。
※abceedではとっくに配信停止になってしまいました
文単は良書だが語彙問題の対策には不十分:文単
次に文単です。
ランキングの際には「あえて」触れませんでしたが、単熟語EXやパス単と比較するのが酷です。
この参考書は「語彙問題で出題される単熟語を網羅する」というコンセプトではなく、英検1級レベルの長文問題をたくさん読むこと、もしくは音源を使って聴くことで、長文やリスニング(特にPart2)への対応力を上げることが主目的の参考書なのだと思います。
私も、3訂版を読んで理解した後に、通勤時間などをつかって音源学習(シャドーイング等)をするのに使っていました。
そもそも英検1級では語彙問題と長文問題で語彙レベルが大きく異なるので、長文問題の過去問で使われた長文から単熟語を覚える「文単」では語彙問題の対策には適さないでしょう。
「良書ではあるが語彙問題の対策には不十分」の評価にさせて頂きます。
「あまり参考書の情報収集をしなかった受験生が「速読英単語タイプの単語帳が好きだから文単にしよう」と文単を選んで完璧に覚えたが、本番の語彙問題に全然対応できず玉砕する」のような悲劇がちょいちょい発生している可能性があるので、「語彙問題の対策には単熟語EX等での補強がほぼ必須」であることは強調しておきます。
ちなみに改定前後で的中率は全く変わりませんので、入手性の良い4訂版をオススメします。
地味にパス単を上回る的中率、究極の英単語Vol.4
最後に究極の英単語Vol.4です。
英検1級に特化した参考書では無いにも関わらず、多くの受験生に愛されてきた参考書です。
2024年4月に改訂されたこともあり、改訂前後での英検1級語彙問題(単語のみ)の的中率を比較しましたが、全く変わりませんでした。
そもそも、改訂前後にそこまで大きな差はありませんので、入手性のよい新しい版をオススメします。
英検1級の英熟語も単熟語EX第2版をやっておけばOK
ここまで的中率をまとめてきましたが、毎回4問出題される英熟語についても触れます。
受験生によってはハナから捨てる人もいると聞く英熟語ですが、「捨てるのはもったいない」ことを強調させてください。
英熟語の的中数のグラフを示します。
パス単4訂版、パス単5訂版、単熟語EX無印、単熟語EX第2版のいずれか1冊の見出し熟語を覚えれば、いずれの回の試験であっても3/4は取れていたことが分かります。
さらにわかりやすくするために、3つの回の平均値でグラフ化します。
ご覧のように、「最強」がいます。
そうです、結局のところ、熟語でも絶対的王者の単熟語EX第2版が1位です。
的中率は圧巻の100%。
つまり、2023年度は単熟語EX第2版をやり込んでいれば英熟語問題は毎回4/4を得点可能でした。
この安定感で拾える4点を最初から捨ててしまうのは非常にもったいないので、英熟語を捨てる戦略は個人的には「愚策」だと思います。
採点の比重からしたら長文問題の文章まるごと捨てるのと同レベルですよね。
最後に
こちらの記事が英検1級合格のために頑張る皆様の参考になれば幸いです。
この記事の評判によっては、新しい試験ごとにデータベースを更新していきたいと思っていますので、参考になった方や他に要望がある方はお問合せフォームやXでコメント頂ければ幸いです。
要望は、需要がありそうだと私が判断すれば調査致します。